ESXi に DNS サーバを何個まで登録できるか

ESXi の DNS サーバの最大登録可能数を調べる

vSphere 構築経験のある多くの方は2つまでとお答えになるかもしれない。
なぜならば、DCUI や vSphere Client から設定した場合、Primary DNS と Alternative DNS の2つまでしか設定できないからだ。
GUI から設定する場合、苦し紛れにカンマ区切りなどで3つ以上登録しようと試みても無駄である。GUI でエラーになってはじかれるだけだ。

ならば、CLI はどうか。
/etc/resolv.conf に手動で追記していくだけであればストレージの許す限り記載することはできるだろうが、
この方法は当然ながら標準的な手順ではない。
esxcli を利用して DNS を登録することも可能である。具体的には以下のコマンドを利用する

esxcli network ip dns server add -s <ip_address>

上記のコマンドを利用してどこまで登録可能かを試してみた。
具体的には以下のコマンドを用いて255個のDNSサーバを追加してみた
for i in `seq 1 255`; do esxcli network ip dns server add -s 192.0.2.$i ;done

なお、本ブログで記載される IP Address は例示用に予約されたものであり、RFC5737 から拝借している。
結果として、少々時間はかかるが登録自体は問題なく成功した。
実環境においてこれほど多くの DNS の登録をすることはあり得ないので、事実上制限なしと考えられる。
なお、参考のために他ベンダーも含める形で DNS 登録数の最大数を調べたところ、2 か 3 にしているところが多いようだ。

DNS を大量に登録した際の動作を調べる

DNS クエリのタイムアウト時間:5 秒則

ESXi の DNS Client は最近の systemd-resolved などではなく、レガシーなソフトウェアであるため、resolv.conf の上から順番に問い合わせていき、問合せ先の DNS に到達できなかった場合に次の DNS サーバに問い合わせる動作になる。
次の DNS サーバに問い合わせる条件はあくまでも到達できなかった場合であり、到達できたが名前解決ができなかった場合はそこで終了となる。
この動作を利用して、いくつの DNS サーバまで問い合わせをしてくれるのかを調べた。
具体的な方法は以下である。
  1. ESXi に存在しない(到達不可能な)DNS サーバ IP を登録し、一番最後に到達可能な DNS サーバの IP を記載する。
  2. ESXi で nslookup で名前解決を試みる。ここで試みる名前解決は、一番最後に記載した DNS サーバで解決可能でなくてもよい。
  3. 名前解決に応答があるかどうかを確認する。すなわち、一番最後に記載した DNS サーバに問い合わせをしたかどうかを確認する
一番最後に記載した DNS サーバから応答が確認できた場合は、すなわちそれよりも上の行に記載されていた DNS サーバのすべてに対し問い合わせを試みたと判断できる。
nslookuptime コマンドを利用することで所要時間を計測し、DNS サーバとの関係性を調べた。
結果は以下の通りになった。 

 



ここまででわかる通り、DNS サーバの数が1つ増えるごとに時間が5 秒増えている
つまり、1つの DNS サーバへの問い合わせがタイムアウトするまで 5 秒かかっていると判断できる。
以後これを 5 秒則とよぶ。

 

DNS サーバクエリの限界値探索 

また、数を増やしていった際にどこまで本当に名前解決可能なのかを調べてみた。
試しに、60 個の DNS サーバを登録したところ、300 秒後にきちんと応答があった。
255 個の DNS まで試したが、nslookup で確認する限りきちんと応答が得られた。

今回の実験では 255 個の DNS 登録までで打ち切りとした。現実的に 255 個の DNS を登録することは考えにくく、タイムアウトの総計は 20 分超になるためである。かつこれ以上増やした場合は、メモリやストレージや関連プロセスの制限などが先に飽和することが予想され、vSphere の仕様確認という意図からは外れるためである。


すべての DNS に到達不可だった場合の挙動確認 

次に DNS を複数登録し、すべて到達不可能だった場合の挙動について調べた。
この場合も当然ながら 5 秒則が当てはまり、最終的に失敗にはなるものの、nslookup コマンド自体は返ってくることになる。


考察と検討

この段階で気になるのが、ESXi は名前解決の遅延をどこまで許容できるかという点である。
実際のところは、名前解決を必要とするプロセスなどに依存すると思われるので、明確な指標を出すのは困難である。
ESXi の DNS Requirement の資料も探してみたが、目安となる数値は確認できなかった。
そこで、今回は以下の KB を基準にすることとする。
DNS name resolution using nslookup takes up to 40 seconds on an ESXi host (2070192)
上記の KB を要約すると、DNS の逆引き設定がない場合に nslookup や SSH のログインに時間がかかる、という事象である。
40 秒かかったことによるシステム的な影響については言及されていないが、この KB が作られているということは、40秒という遅延は ESXi として想定されたものではないのだろう。
これを上記の 5 秒則に当てはめると、40 秒以内に名前解決可能な DNS の数は 8 個までとなる。(9 個にすると 40 秒をわずかに超える)
もちろん、35 秒だとしても、IT 業界に従事する人間の感覚的には長すぎる。
では、アプリケーション観点ではどうか。
標準的かつ広く利用される HTTP で調べてみた。 
Hypertext Transfer Protocol (HTTP) Timeouts
もちろん、ウェブサーバの実装や設定などにより変わってくると思われるが、上記の記事によると HTTP の Timeout は 30 ~ 120 秒らしい。
HTTP を利用するアプリケーションやプロセスも同様の想定をしていると仮定すると、DNS による名前解決は当然ながらこの Time Out 値に収まらなくてはならない。
したがって、DNS の名前解決遅延は 120 秒以内ということになり、5 秒則に当てはめると 24 個までとなる。

本記事の結論

とはいえ、上記の帰結は現実的かと問われれば否定せざるを得ない。
実際に 100 秒以上名前解決に時間を要するのであれば、何らかの問題が発生すると考えるのが自然だろう。

また、「どうせ失敗するのであれば早く失敗したほうが良い」という状況も存在するため、到達負荷の DNS サーバが多い場合には 5 秒則に従って、失敗までの時間がリニアに増えてしまが、あらかじめ少なめにしておけば名前解決失敗 or 呼び出し元プロセスのタイムアウトによる失敗までの上限時間が短縮されることになり、例外処理をすぐに実行出来たり、別の方針に切り替えたりといった柔軟な対応が可能になる。

結局のところ、他ベンダーの製品がそうであるように、また vSphere Client や DCUI がそうであるように、現実的な DNS サーバの登録数は、2 ~ 3 であり、その範囲で稼働できるように DNS サーバの可用性を設計すべきということになる。

 

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