仮想アプライアンスのFile Base Backupの存在意義

File Base Backup とは?

仮想マシンのバックアップといえば、VADPを利用したイメージベースのバックアップが一般的ですが、

vCenter Server NSX Managerといった仮想アプライアンスにおいてはファイルベースのバックアップというものが存在します。

ファイルベースバックアップとは、仮想アプライアンスのイメージそのものではなく、仮想アプラインスとしての設定値やログファイルやDBダンプといった情報のみのバックアップであり、OSイメージ自体は含まれません。そのため、イメージベースのバックアップよりはサイズが小さくなります。

一方で、リストアの際には仮想アプライアンスのOVAファイルが必要となります。

OVAファイルから仮想アプライアンスを展開したのちに、仮想アプライアンスの機能でバックアップファイルから設定等を復旧する流れになります。

 

 

既存のバックアップ手法があればファイルベースバックアップは不要?

 

vCenterサーバでFile Base BackupがサポートされたのはvCenter 6.5からです。

それ以前はVADPを利用したイメージベースバックアップが主流だった認識です。

File Base Backup/Restoreの登場によって、vCenterサーバのイメージベースバックアップが非サポートになるという噂も一時期耳にしましたが、

少なくとも本記事投稿時点ではイメージベースバックアップは引き続きサポートされています。

Image-Based Backup and Restore of a vCenter Server Environment (vmware.com)

 

ここで一つの疑問が生まれます。

「従来のイメージベースバックアップを利用している環境であればファイルベースバックアップは不要なのか?」

 

厳密にいえばイメージベースバックアップとファイルベースバックアップのそれぞれからリストアした場合で、

100%同じ状態にリストアされるわけではないのですが、特定の正常動作ポイントにリストアが可能であるという意味において、

どちらか一方の手法でバックアップをしていればよい、と考えます。

 

といってもそれぞれメリットとデメリットがありますので、環境に応じて使い分けたほうがいい場合もあります。

 

 

ファイルベースバックアップ&リストアのメリットとデメリット

 

従来のイメージベースバックアップと比較した際のファイルベースバックアップのメリットについては以下のDell Communityの投稿が参考になります。

参考:VxRail Integrated Backup機能について | DELL Technologies

 

上記の記事内ではメリットとして以下があげられています。

 

バックアップソリューションが不要(標準機能で取れる)

Kubernetesなど、VM単位でのバックアップが必要のない環境や、クラウドプロバイダーなどでUserVMのバックアップはインフラ提供側に責任がなくシステムVMだけバックアップができればいいという要件においてはファイルベースバックアップであれば追加費用なども不要なため便利といえます。

 

 

標準機能であるため互換性や動作検証が不要

VADPを利用するバックアップソリューションは数多ありますが、VMware社が公式で提供しているものは一つもありません。
(過去にはvSphare Data ProtectionがありましたがvSphere 6.5で提供終了)

つまり、3rd party製のソリューションを使うしかないわけですが、その場合は新しいバージョンが出るたびに常に互換性のリスクがありますし、vCenterのような管理系についてはうまく戻せないケースも考えられます。

一方でファイルベースバックアップであれば、vCenter Serverの標準機能となりますので互換性のリスクや動作検証の手間とは無縁です。

 

バックアップサイズが小さい

ファイルベースバックアップではOS部分のバックアップが不要なため、バックアップ容量を小さくできます。

イメージベースバックアップではOS部分も取得されるためサイズが大きくなりがちです。

そのためバックアップ容量やバックアップ時間を小さくできます。

ただし、バックアップソリューションやストレージ側の重複排除機能が利用可能な場合は大差ないケースもあります。

 

④OS破損などの論理障害に対応しやすい

ファイルベースバックアップはOS部分のバックアップはしないため、仮想アプライアンスのOS破損には強いといえます。

イメージベースバックアップであればOSの破損までもバックアップされてしまうため、ファイルベースバックアップのほうが有利なケースもあります。
(ただし状況としてはかなり限られます)

 

 

上記以外にもファイルベースバックアップにはイメージベースバックアップにはない特徴があります。

 

 

+ サポートから提示しやすい

これはユーザ目線というよりもベンダーやOEMサポート目線でのメリットとなります。

基本的にvCenterサーバのバックアップは必須ですが、VADPを利用したイメージベースバックアップはvSphere/vCenterの標準機能としては存在しないため、

場合によってはサポートからお客様に要求しにくい場合がありますが、仮想アプライアンス標準機能であるファイルベースバックアップはサポートからも取得を依頼しやすいものとなっています。

逆にユーザ観点では標準となるファイルベースバックアップ手法があるにもかかわらず、バックアップの取得を怠っていた場合は情状酌量の余地が小さくなると考えられます

 

トラブル時にVMwareへの問い合わせで完結できる

ファイルベースバックアップはvCenterの標準機能であるため、万一バックアップやリストアのオペレーションにおいて障害や不具合が発生した場合に、VMwareOEMサポートへの問い合わせで完結することができます。3rd party製のバックアップソリューションの場合はユーザでの切り分けが必要となったり、たらいまわしのされるリスクがあります。

 

+競合他社との差別化

これもベンダーやSIer観点となりますが、案件によってはベンダー標準機能で管理系のバックアップリストアが完結できたほうが都合が良い場合もあります。

 

 

どちらを選ぶべきか

ユーザ目線で都合の良い手法でよいと思います。

既存で3rd Party製のイメージベースのバックアップソリューションがあるならば、無理にファイルベースバックアップと併用せずに一貫したバックアップ&リストアの運用にしたほうが良いケースが多いと思います。

バックアップ&リストアの運用を考慮する際に本記事の内容がお役に立てば幸いです。

  

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